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日本経済新聞の人間発見に連載されました ~5~

2019年11月4日

日経新聞 人間発見 -5-

町工場、ロボットに挑む ⑤

自社製品の夢実現 大阪万博で披露へ

バリと呼ばれる切断面の出っ張りやほこりの出ない、画期的な金型の開発に成功した。祖業であるプリント基板加工との2本柱で経営が安定。次に目指したのがロボット事業だ。

1993年に起業した時から、「いつかは自社製品を開発して売り出したい」と考えていました。プリント基板は製品の中に納まり、加工する当社の名前が出ることはありません。社員が誇りを持てるようにしたとの思いもありました。

ロボット開発は約10年前から始めました。一つはプリント基板の加工に使う自動搬送機で、実験的に自社ラインで動かしています。現在はほとんどの工程で、社員が手作業で対象物をプレス機にセットし、切断した後は取り外しています。自動搬送機は安全性の確保と人手不足への対応に欠かせません。

もう一つは小中学生向け教材「エレボット」です。人間の形をした高さ約20センチメートルのロボットが、小中学生のプログラミングに従っていろいろな動きをします。今春、4万9800円(税抜き)で売り出しました。子供のおもちゃにしては高いかもしれませんが、地元で開くプログラミング教室に1回参加して、使い方などを学べます。

ロボット事業は2009年に地元、大阪府八尾市のコンテストで優勝したことが弾みになった。

その時準優勝だった奈良先端科学技術大学院大の学生が、自動車メーカーを半年で辞めて当社に入社してきました。ジュニア部門で優勝した少年も彼を慕い、地元の高等専門学校を卒業後に当社に加わりました。ウェブサイトにロボット事業を乗せているせいか、最近は国立大学からも「自由でオモロそうな会社」と新卒学生が来るようになりました。

ロボット本体は金属でできていて、その加工は町工場の得意分野です。胴体に使う樹脂も3Dプリンターで作れます。他社製の部品を活用してプログラムなどを組めば、ロボットが出来上がります。町工場でも、やる気と人材があれば手が届くのではないでしょうか。

子供たちへのものづくり教育や中小企業の連携促進など、地域への「恩返し」にも取り組む。

八尾市の異業種交流会「有志の会 八尾」の運営にかかわり、地元特産の枝豆、若ゴボウを使った「地ビール」を開発したり、お祭りやイベントで販売したりしました。昨年8月には子供たちがものづくりを学べる「みせるばやお」を市内にオープンしました。体験教室を土日などに開いて、そのなかには「エレボット」のプログラミング教室もあります。

25年には大阪で2度目の国際博覧会(大阪・関西万博)が開かれます。1970年の前回は楽しめなかったので、今度は出店者として町工場の力を世界中にアピールできたらええやん、と思います。

(この連載は東大阪支局長 苅谷直政が担当しました)